自分が許した者以外誰も立ち入れないはずの青薔薇の庭に、全身ボロボロになった青年セナが倒れているのを発見したアーシェは、いかにも訳ありの彼を誰にも内緒で庭のサロンで匿うことを決意。
乙女ゲームのヒロインとしては、正しい選択なのでしょう。心優しいのは結構なことです。
でもアーシェは魔界の姫という理由でいろんな筋から命を狙われているのだから、もう少し警戒心を持ったほうがいいのではないかと。警備の厳しい城内の、さらに入室制限がかかっている場所に唐突に現れたセナはどこからどう見ても不審者でしかないのに、その素性も事情も一切知らないままで彼を匿うことは客観的に見れば愚行だとしか思えません。もしもセナがアーシェや魔王の命を狙う刺客だったりした場合は、アーシェ自身がそれに一役買うことになってしまうのですから。(モニョモニョ)
その後、下級天使が魔界に逃げ込んできたという情報を耳にしたアーシェが「まさかあなたは天使なの?」と疑問をストレートにセナにぶつけると、彼は笑顔であっさりと肯定。自分が天使だとバレたら悪魔たちに殺されるというのに、セナはあっけらかんとしたものです。
そんなセナに、アーシェは自分が魔界の姫だとは名乗らず、貴族の娘だと嘘をついてしまいます。魔界の姫は天使たちの標的にされているので、素性を明らかにしてしまったらセナがどこかに行ってしまうのではないかと考えてのことでした。
「口を開けてみて」と言われて素直にそれに従ったら、セナにチョコレートを突っ込まれ、チョコを初めて食べたアーシェは大喜び。(魔界にはチョコがないらしい)
ここもどうしても一言言いたい。これが毒だったらどうするんでしょうか。
そりゃあ、人様に差し出された食べ物を警戒するのは相手に失礼なことですけどね。でもでも、何度も言いますが、アーシェは命を常に狙われている次期魔王候補。よく知りもしない不審者から差し出されたものを何の疑いもなく食べてしまうのはどうなんでしょう。
少し躊躇って、でも最終的にセナを信じて食べる、という流れならともかく、まずは考えるという作業を行ってもらいたいものです。これで次期魔王としての教えを日ごろから叩き込まれている設定だといわれても、説得力皆無ですってば☆
そんなこんなで、警戒心のないアーシェとからからっとした性格のセナは、すぐに打ち解けていきます。
アーシェはセナが天使だと分かって以降も彼を警戒することなく、やはり彼のことを皆に秘密にしたまま匿い続けることに。皆の目を盗んではセナに食事を運び、そのお礼にセナからチョコレートを貰う日々が続きます。
アーシェは子供のころ、こっそりドラゴンの子供を飼っていたことがあって、その時と同じようなどきどき感を楽しんでいるのですが……これは少々モニョります。
ペット扱いというのは、なんだかなあ。助けられたほうは文句を言う筋合いでなくても、プライドは少なからず傷つきますよ。
その後もセナは大体の場合は優しいのですが、時々、無邪気な残酷さでアーシェを傷つけることを言って、アーシェがそれに怖さを感じる一歩手前でまたセナが笑顔に戻り……というパターンを繰り返していきます。あっけらかんとしたセナの笑顔の裏に潜むのは毒。セイジュの皮肉より、過酷な過去を背負っている分、もしかしたらセナのほうが恐ろしいかもしれません。
アーシェが自分がいかに父親から可愛がられているかという話をセナに聞かせて、セナの家族はどうなのかと訊くと、セナ激怒。
実はセナの母親は人間で、霊力の高い巫女だったために、その力を欲しがった天使たちに×姦され、その結果としてセナが生まれたのですが、父親は名乗りを上げず(そもそも特定不可ですが)、セナは人間と天使のハーフだということで散々虐待されたり蔑まれてきたという不幸極まりない過去の持ち主なのです。
アーシェはそんな事情を知らないし、悪気があったわけでも当然ないけれど、セナにとってはアーシェの自慢話はかなりきついものがあるわけです。セナのような暗い事情がない私が聞いても、アーシェのパパ自慢はかなりウザかったですし。(笑)
「パパは私のためなら何でもしてくれるの♪」てなもんですよ。皆に溺愛されているアーシェは幸せで当然という状態で育てられてきたので、世の中には恵まれない境遇にいる人たちがいるということを分かってないんじゃないかというような言動が、たまに見受けられます。アーシェよ、いかに箱入り娘とはいえ、誰しもが皆幸せに暮らしているなんて思わないことだ……。
アーシェを蔑むように皮肉り、怒りをぶつけたセナですが、彼はすぐに自分を取り戻します。その切り替えの早さがむしろ怖い。黒い感情を抑え込んだ裏でどんなことを考えているんだか。天使であるセナのほうがよほど悪魔チックです。
またある日、誕生日パーティーで着る予定のドレスを試着したアーシェは、セナにドレス姿を見せたくて青薔薇の庭に。
着飾ったアーシェが可愛くて、二人はいい雰囲気に。セナはアーシェにキス。だけどそれは唇ではない場所に。というのも、いつもセナは唇以外にしかキスしてくれないのです。
そのことにずっと不満を覚えていたアーシェは今度こそ唇にキスして欲しいとセナに迫るのですが、セナは「唇へのキスは、したい子としたくない子がいるから」と冷たく拒絶。
「私にはしたくないの?」とショックに震えるアーシェが問えば、「したくないね」とセナはきっぱり即答。
微妙な雰囲気の中、セナにソファに押し倒され(無理やりではない)、アーシェが抱かれようとしたとき、猫カイルが飛び込んで邪魔を。
猫カイルはここしばらくアーシェの様子がおかしいことに気づいていて、彼女の行動をこっそりと窺っていたらしい。
「姫様は魔王の娘で次期魔王候補。何て畏れ多いことを!」と激怒するカイルと、「セナは私が魔王の娘だと知らなかったのよ」とセナを庇おうとするアーシェが激しい言いあいをしていると、「知ってたよ」とセナはあっけらかんとしたもの。
アーシェは強い魔力を持っているため、セナはアーシェと出会った瞬間からアーシェの正体に気づいていました。そしてセナは言うのです、「君たちのバカみたいなお芝居に付き合っていただけだよ」と、にこにこと。
邪気のない笑顔であからさまに侮蔑してくるセナに、アーシェはまたまた大ショック。そこに追い討ちをかけるように、「どうせここをもうすぐ出て行くつもりだった。その前に、せっかくだから君をいただいちゃおうと思ったんだよね〜」とやはり笑顔で畳み掛けられ……。
魔王の娘を抱いた天使はハクがつくから、アーシェをからかうついでに利用していたのだと言うセナは、アーシェが自分のことをペット扱いしていることにも気づいていたのです。
幼い頃にアーシェがこっそりと飼っていたドラゴンがどうなったかというと、最後は飼いきれなくなって森に返してしまったんですよね。返すという言い方をしても、結局は手に負えなくなって捨てたということです。
「ペットごっこはもう終わり」と告げられたアーシェは、セナの本性にか、それとも自分の不謹慎な思いを最初から見抜かれていたことにか、ショックを受けて言葉を失ってしまいます。
バッドエンドは。
ここから今すぐに出て行けとカイルは憤怒の形相でセナに迫りますが、(体が万全でないから?)今はまだ無理とセナは悪びれもせずその後もしばらく青薔薇の庭のサロンに居座ります。
酷いことを言われたにもかかわらず、アーシェはセナのことを密告する気になれず、カイルに口止めをするかわりに、セナとはもう会わないと約束をします。
でも毎日薔薇園にセナに会わないようにして食事だけは届けに行き、空になったバスケットには、いつもセナからのチョコが……。
後日、誕生日パーティーを終えたアーシェがセナに再び会う決意をしてサロンにいくと、セナはチョコレートだけを残して姿を消しておりました……というほろ苦い終わりです。
アーシェとセナはたぶんもう二度と会うことがなく、アーシェの初恋は後味の悪いものに。
ハッピーエンドは。
出て行けとセナに迫る猫カイルに、駄々っ子アーシェが爆発。
「行かないで! 行っちゃやだ!!」
もう、こうなったらアーシェは手がつけられません。色恋が絡むと、全く聞き耳持ちませんからね、この子は。
あれだけ冷たく拒絶されても見下されてもセナのことが好きだと訴え続けるアーシェに、カイル根負け。結局セナもアーシェに絆されたようで(つか、セナもアーシェのことを愛してしまっていたのですが)、さっきの冷たさが嘘のように柔らかな雰囲気に。
セナは巫女だった母親の能力を受け継いでいて、唇にキスした相手と同化することが出来るのです。セナは、キスした相手の魔力を増幅し、自分の力として自由に出来る。だけどセナにキスされた相手は、セナが死ねば死ぬし、セナと離れると死んでしまう運命が課せられることに。
セナと唇にキスした者の末路は悲惨。それが分かっているからこそ、本当に好きになったアーシェの唇にどうしてもキスできなかったのだとセナが告白。
アーシェは全てを理解した上でセナのキスを受け入れます。(うろ覚えでですが、自分からせがんだんじゃなかったかな、たしか)
そしてセナもそれに応え、二人は唇にキスし、同化し、二度と離れられない体になって、初めて結ばれます。
エロイベントでのセナの中の人、毎度のことですが、気合入っててすごかったです。(笑)
ピー(自主規制)を啜りながら喋ったりだとか、やたらとエロっちい。さすがはエロゲ。さすがは空野太陽氏。
話を戻して、心身ともにばっちりと結ばれてしまった二人は、人間界に駆け落ち。
時代の魔界を担うべく大切に育てられてきた次期魔王候補のアーシェは、一も二もなく人間界に駆け落ち。自分の立場より、魔界の未来より、恋する人と幸せになりたいがため、全てを簡単に投げ出して人間界に駆け落ち。人間界でセナの母親が通っていたという高校に通い、セナのお嫁さんになることを楽しみに、うきうきハッピーライフの日々。
アーシェの強大な力を自分のものにしたセナがあれこれ工作しているみたいで、追っ手におびえているという様子も見られず、「セナ、だーい好き♪」の台詞で締めくくり。
満面の笑みですよ、アーシェたん。
そりゃあ、セナと同化してしまったからにはアーシェはセナと離れては生きていけないし、魔界の姫と下級天使の恋は絶対に認められないのでしょうけど。
今まで自分を大事に育ててくれた人たちを裏切ることや、魔界を統べるという責任を完全放棄する無責任さとかには、ほとほと萎えてしまうのです。
熟考し、悩み、苦しみぬき、相応の覚悟を持って恋に生きるのなら、それはそれでいいと思うんですよ。それも状況と展開次第ですけど。
でもこの魔界には現段階ではアーシェ以外に魔王になれそうな人はいないのだし(双子は魔力が高くても今はまだ訓練兵に過ぎない)、しかも魔王の弟に不穏な動きもあるのだし。
自分の恋が叶えば、その他はどうでもいいのでしょうか。
恋に狂うと、自分を大事にしてくれた人たちをこんなにもあっさり捨てることができて、その人たちを思い出すこともなく楽しい毎日を過ごせるものなんでしょうか。
UTMは面白かったし気に入っているのですが、アーシェの度を越した子供っぽさだけはネックです。
乙女ゲームだから、最終的に恋に走るのはかまわないと思います。やむなしと言いますか。
だけど、もう少し王族の自覚と責任感をもったヒロインであればよかったのになあと、個人的には思う次第です。